犬の皮膚病の中でも特に多いのが、膿皮症です。
膿皮症だからといって犬を死に至らしめるようなものではないですが、夜に強い痒みを起こしたり、痛みや発熱を引き起こしたりもします。犬のQOL(quality of life)を低下させてしまう為、他の病気を誘発してしまったりする事があります。
では、実際犬が膿皮症になってしまった際、どのように治療をしてあげればいいのか、そもそも膿皮症とはどのような病気なのかも詳しく解説します。
記事の目次
膿皮症とは
膿皮症は主に犬の皮膚にできる疾患の事で、犬の皮膚病の中でも特に多く、ポピュラーな病気です。皮膚には常に一定の菌が存在しています。
しかし、何らかの原因から皮膚組織がバランスを崩し、皮膚に常在している黄色ブドウ球菌が異常に繁殖してしまい、発疹や痒みを引き起こした状態の事を言います。
疾患の現れる箇所は、体幹部分、足の付け根、耳の裏など様々です。
そんな膿皮症という病気は一つのように思われるかもしれませんが、その種類は一つだけではありません。
膿皮症の種類
・表面性膿皮症
膿皮症の初期段階です。皮膚の一番外側にある表皮に発生する膿皮症の事をいいます。
人でいうニキビのような大きさ、形をした、小さな膿ができます。
・表存性膿皮症
毛包と表皮周辺に発生する膿皮症の事で、毛の根元の角質層であったり、毛包と毛包の間に細菌が入り込み広がってしまいます。
酷くなってしまうと、膿が弾けて、赤くなってしまう事もあります。
・深在性膿皮症
毛包全体や真皮、それから皮下組織などの比較的広範囲に発生する膿皮症で、細菌が皮膚の奥深くに入り込んでしまっている状態の事を言います。
犬が痒がり過ぎてかきむしってしまうので、かさぶたができてしまったり、かいた所から出血してしまったり、皮膚が厚くなってしまったりもします。
この状態になってしまうと、発熱を起こしたりして、体調にも変化が現れます。
膿皮症を引き起こす様々な原因
膿皮症の原因は大きく分けると、環境面や抵抗力、他の疾患などがある場合が考えられます。
・環境面
常在菌であるブドウ球菌が一気に増えてしまい、発疹や痒みを引き起こします。日本では春先や雨のシーズン、梅雨頃あたりからが発生率が特に高くなります。
・他の疾患がある
食物アレルギーやアトピー、脂漏症、糖尿病、肝臓病、クッシング症候群、甲状腺機能低下といった皮膚に対して影響を起こしている基礎疾患が引き起こしている場合もあれば、ダニ等の寄生虫が二次的に弾き起こしている場合があります。
これとは別に、ジャーマンシェパードには原因がはっきりしていない全身性膿皮症と言われている疾患があります。膿皮症という病気はどの犬にも起こりますが、免疫力があまり高くない子犬やシニア犬、アレルギー体質のある犬は特に引き起こしやすくなるので、注意してあげる必要があります。
気を付けるべき膿皮症の症状
膿皮症の特徴は感染スピードがとにかく速いこと。一度感染すると驚くような速さで身体のあちこちに発疹が現れます。増えるスピードが速い為、完治に時間がかかってしまう事もあります。
そして、症状が進行してしまうと、強い痒みに襲われるので、犬はかきむしってしまいます。そうなると、完治までの時間がさらに伸びてしまうので、早期に治療をしてあげてください。
飼い主さんは犬の身体をチェックして、発疹があったら全身を隈なく見てあげてください。酷く痒がるようであればまずは獣医さんに診てもらってください。
以下に特徴をまとめています。
・膿を出すようなジュクジュクした発疹ができている、それが日に日に増えている
・発疹がある部分の毛が抜けている、触るとフケのような物が取れる
・発疹のある皮膚の箇所が色素沈着してしまっている
・鼻の頭にだけ発疹ができている(短頭種に多い膿皮症のタイプです)
・肉球の間や足先が腫れて、膿んでいる(他の疾患が膿皮症を引き起こしてしまっているタイプです)
膿皮症の診断・治療
発疹や膿から検出される菌分析、視診と一緒に基礎疾患がないかどうか、などを見極めた上で、治療方法を獣医さんと一緒に決めていきます。膿皮症の診断を受けたとしても、その原因が何かまでは獣医さんも簡単には特定する事はできません。
その為、普段から愛犬の状態を詳しく確認するようにして、気になることは獣医さんにしっかり伝えておきましょう。
膿皮症を診断された場合の治療法を解説します。
膿皮症の治療法
・抗生物質
膿皮症の連鎖的な発疹を止めるために投与されます。病気や体調にもよりますが、投薬が長期にわたることもあります。最低でも3週間は使用する必要があり、深在性になると最低でも6週間以上は投薬期間が必要になります。しかし、一度治っても再発の可能性が全くないわけではないので、1週間~2週間程度は投薬を続けることもあります。
ただ、抗生物質が合わないと、軟便になるなどの副作用が起こることもあります。さらに、菌に対して効果がある抗生物質を使用しないと、効き目が弱かったり、効果があまり期待できない事もあります。
少しでも合わないと思ったらすぐ相談するようにしましょう。
・薬用のシャンプーで身体を洗ってあげる
膿皮症を引き起こす菌の繁殖を抑えて、皮膚の清潔さを保つために、週に1度のシャンプーをしてあげる事が望ましいです。
しかし、シャンプー自体を選択ミスしてしまうと、逆に薬剤が皮膚への負担になってしまって、余計悪化させてしまいかねません。さらに膿皮症がかなり進行してしまっている場合、シャンプーを使ってしまう事自体が肌への負担になるので、この場合はシャンプーは使わないでぬるま湯で洗い流してあげる程度で問題ないこともあります。
・かゆみ止めを塗ってあげる
犬があまりにも痒がるならステロイドを使う事もありますが、この場合は対応療法でしかないんです。
塗り薬は症状が軽い段階であれば塗り薬が効果的な事があります。しかし、進行してしまていると効果があまりない事もあるので、獣医さんに相談してみるといいでしょう。
膿皮症は、自宅で行うケアがかなり大事になります。普段から犬が使っているベッドや犬小屋、室内のハウスなども清潔に保ってあげる事も大事です。それから適切な運動、食餌なので体調を整えてあげて下さい。
膿皮症の予防
膿皮症にかかってしまってからの治療等を紹介しましたけど、次は予防法に関して解説します。
・清潔にしてあげる
まず第一に清潔にしてあげる事です。
特に汚れやすいのは排せつをする局部や周辺の下腹部です。それから食べ物を食べた時に残る口の周りの食べカスです。これらは常にキレイに拭きとってあげて、放置し過ぎないようにしてあげて下さい。
そして、毎日じゃないにしても、こまめにブラッシングをして風通しを良くしてあげて下さい。被毛が濡れてしまった場合は、細菌の発生を促してしまう可能性が高いので、すぐにドライヤーやタオルで乾かしてあげて下さい。その後、使用したブラシは必ず消毒してあげる事が大事です。
・寄生虫の管理をしっかりしてあげる
膿皮症含め色んな皮膚疾患の大敵は、外から寄生してくるノミやダニです。
これらを繁殖させないようにする為に定期的に駆除薬を投薬したり薬用のシャンプーを使って身体を洗ってあげたりしてあげましょう。
・メンテナンスは適切に
筋が繁殖しやすい夏場は毛を短くカットしてあげたり、ブラッシングの頻度を増やしたりして対応してあげましょう。
さらに、シワが多めの犬種の場合は、顔を中心に1日1回くらいタオルで洗ってあげると効果が高いのと、そうではない犬種でも局部などの蒸れやすい箇所をタオルで拭いてあげても効果が高いです。
・ストレスは解消させてあげる
実は、皮膚炎とストレスの関係は繋がっています。
その為、ストレスを溜めないようにスキンシップをよくとったり、遊んであげたり、散歩やドッグランなどに連れて行ってあげて解消させてあげて下さい。
・食事に気を付けてあげる
皮膚疾患を防ぐのに特に胎児なのは免疫を強くしてあげる事です。
バランスがとれたドッグフードやハーブ、サプリメントなどをしっかりと食べさせてあげて下さい。
特に身体にいい栄養素は「脂肪酸」「消化酵素」「ビタミンA、C、E」です。ハーブはエキナセアっていうものがお勧めです。
まとめ
薬用シャンプーでしっかり体を洗ってあげて、抗生物質や塗り薬など適切な処理をしていれば、かなりの回復は見込める可能性が高いです。
さらに、回復してからは新たな発疹ができにくくなることもあるので、もし発疹を見つけたらすぐに獣医さんの診てもらうようにしましょう。
発疹がたくさんできてしまっていて、一番症状の酷い箇所であっても治療を続ける事で乾燥状態にすることができるので、そうなると発疹が新たにできにくくなります。
適切な処置をしてあげれば回復は十分望めると思いますので、まずは日ごろから愛犬の身体のチャックを怠らないようにしてあげましょう。
その他の皮膚関係の病気
犬は膿皮症以外にも様々な病気を持ってしまう事があります。
アレルギーを持っている犬はアレルギー性皮膚炎を引き起こす可能性があります。
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